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仁和寺・松林庵
888年に宇多天皇によって開創された総本山仁和寺は、明治の純仁法親王までの間、皇子・皇孫方が代々門跡(住職)を務めてこられました。平安時代には、貴族や当代の有名歌人たちが仁和寺に集っては和歌の会が度々催されるなど、仁和寺文化とも称されるまでの一大サロンが形成されました。世界遺産です。
松林庵は、江戸末期に寄贈された建物をリノベーションした数寄屋造りの一棟で、1日1組のみに開かれた高級宿坊です。ゲストだけに許された仁和寺での特別拝観や歴史探訪と共に、特別な時間を過ごしていただく趣のある宿泊施設です。
松林庵の空間が息づき 伝統的な和室と家具が引き立て合う関係を求めました。直径120センチのラウンドテーブルが6畳間の中心に置かれています。ダイニングチェアーの脚は畳ずり、細い格子の背のデザインが繊細な表情です。
家具は国産特注。木質はナラ材、明るい自然な特別色に仕上げています。内装の濃い茶色に合わせるのではなく、家具は白木風で統一して清浄な雰囲気となりました。
窓側の屏風は植物染めで高名な「染司よしおか」で誂えたもの。背面のシンクを隠し、ダイニングスペースとしての落ち着きを確保しています。
メイドインJapanの細やかな風合いを触感でも楽しんでいただけます。
季節感の細やかな演出は 日本ならではのおもてなしです。
季節や⾏事に合わせた室礼は床の掛け軸、器、花や建具、布物などで都度表現されます。
奥座敷のソファに置かれた植物染めのクッションは 染司よしおかで誂えたもの。吉岡幸雄氏監修のもと、色の取り合わせで季節を表現しています。
オープン時には春から初夏、杜若を思わせる濃い紫、薄い紫、緑色に染められています。夏は藍色のグラデーション、秋は紅葉をイメージした色合わせとしました。染め布は、再現された日本古代の麻布「麻世妙まよたえ」です。
座敷には、障子越しの灯りの前に文机を配置。
夜は蒲団を敷き、寝室となります。京都の老舗蒲団店イワタの寝具を採用。麻の蚊帳を張り、日本ならではの眠りを体験いただきます。
2階には、元から個性的な茶室があります。
茶室広間は、ゆったりとした時間と開放感が味わえる部屋です。ハンスウェグナーデザインの名作「CH22」を2脚を庭に向かって配置しました。日本家屋と北欧の家具は非常に相性が良いものです。
小さな床には 松林庵由来の松の絵の扇子をかけています。
食器、装飾品は京都の伝統店から、また京都工芸美術大学を通して京都在住の陶芸家の作品を用いています。